価値を上げろ!「100円のコーラを1000円で売る方法」に学ぶマーケティング
お客様の要望に100%答えた商品が売れないのは何故?
「顧客」に振り回されていませんか?と問いただされる1冊。
本書はマーケティングを学ぶことができる本ですが、
ただ理論が並んでいるだけではなく、10章に渡る小説がメインとなっており、
その中で自然な形で学ぶポイントが取り入れられています。
ストーリーでマーケティングを学べる、分かりやすくなっている1冊です。
「100円のコーラを1000円で売る方法」の特色
上記の通り、ストーリーを通して学べるのが本書の特色となっています。
そして、主人公である宮前久美はなかなかの気の強い負けん気全開のキャラで、
その宮前の上司役であり、宮前の戦いの相手兼教師役の与田もなかなかのねっちこい系の性格の悪そうなキャラ。
その二人の戦いを通して、ストーリーが進んでいきます。章の数え方も「round」が使われています。
また、最初しか出てこないですが、部長のストレッサー回避能力の高さは見物。
その本書の特色としてのストーリー形式ですが、実際のケーススタディを会話に取り入れ、
足りない部分を疑似ケーススタディとして本文に組み込むという方式をとっており、
分かりやすくなっています。
しかし、この本は本当は初心者向けじゃないのかもしれない。
基礎は当たり前のようにサラッと流されているという特徴があります。
それは知っていて当然であることではあるかもしれませんが、
知らない人は知らないという考え方やパラダイムが多くあります。
例えば何もマーケティングや会社について知らない人に読んでもら
伝わるのかということ。
恐らく解った気になってわからない、そんなケースもあるかもしれないです。
しかし、そんな方でも読んで何も得ないかと言えば、そうではないと思います。
得る物はある。量の差。
もちろん、そんな基礎はわかっているという人には、
改めて、この本の中に書かれているような罠に嵌っていないかというチェックにもなりますし、
為になる話も多くあると思います。
ちなみに、表題になっている、100円のコーラを1000円で売る方法は本書で学べる事柄の中の1個の事柄にすぎません。
そのことだけを言っているわけではないという事です。
先日紹介した「シロクマのことだけは考えるな」と同じ、「題名の件は内容の一部」形式です。
シロクマのことだけは考えるな!―人生が急にオモシロくなる心理術 (新潮文庫)
「100円のコーラを1000円で売る方法」で学ぶことが出来る10個の事
目次から見ていきます。
- アメリカの鉄道会社はなぜ衰退したのか?(事業の定義)
- 「お客さんの言いなりの商品」は売れない?(顧客絶対主義の落とし穴)
- 顧客の要望に100%応えても0点(顧客満足のメカニズム)
- 値引きの作法(マーケットチャレンジャーとマーケットリーダーの戦略)
- キシリトールガムがヒットした理由(バリュープロポジションとブルーオーシャン戦略)
- スキンケア商品を売り込まないエステサロン(競争優位に立つためのポジショニング)
- 商品を自社で売る必要はない(チャネル戦略とWin-Winの実現)
- 100円のコーラを1000円で売る方法(値引きの怖さとバリューセリング)
- なぜ省エネルックは失敗してクールビズは成功したのか(コミュニケーションの戦略的一貫性)
- 新商品は必ず売れない?(イノベーター理論とキャズム理論)
こちらが目次です。
そのなかでもコアとなることは「顧客絶対主義」からの脱却。
カスタマーマイオピアからの脱却です。
カスタマーマイオピアとは”近視眼”的にみることによって、
お客様のいう事を鵜呑みにし、お客様の要望をそのまま飲む形となり、
結果として、本当に求めていること・必要としていることを提供できずに、
長期で見たときにお客様が離れて行ってしまう状態とされています。
普通は、離れていく状態というよりは「目の前のお客様のことしか見れていない状態」のことを言うと思います。
現状、いまだにカスタマーマイオピアに陥っている日本企業は多いです。
本当に必要なのかもわからないような部分までお客様の要望にこたえる形で強化していき、
競争相手も含めて全体が同じような強化をし、結果、差別化も図れず、
これといったブレイクスルーも起こすことができず、過当競争に陥ってしまうという最悪の状態です。
それ以外にも、目次のように多くの事柄について学ぶことができます。
コミュニケーション戦略の一貫性の話なんかは、本来、当たり前の話であるのに、
日本ではいまだ一貫性が取れていない事例も数多くみられます。
一読してみてください。