伊坂幸太郎 重力ピエロ
2016/11/08
春が二階から落ちてきた。
そんな印象的な書き出しから始まる数奇な物語。
しかし!そこがこの本の醍醐味ではない!
なんといっても伊坂幸太郎作品の良さは登場人物の個性とあくの強さ。
今作もその特徴の効果はいかんなく発揮されている。
宇宙人のふりをする弟、見守る兄。民家を襲撃する弟、見守る兄。
弟、春の突拍子のなさはさることながら、一番たちの悪いのは常識人を装った異端児の兄である。
物語は兄の視点書かれており、なんとなく”普通”に思えるのだが、よくよく考えれば兄も普通ではないぞ、と。
そんな兄弟の織り成す会話は実に読んでいて心地の良いものである。
今作でも、キャラの個性は強め。
また、良さはもちろんそこだけではない。浅い言葉で言うと、そう、深いのである。
テンポの良い会話の内容は何気ない一文であれ、実に考えさせられる。
アートとは何か、性とは何か、人間とは何か、正義とはなにか。様々な視点があり、独自の解釈が展開される。
正解不正解なんてものは置いておき、その問題提議のような送球に実に考えさせられる、のである。
根底にあるのは、「血のつながり」「遺伝子」というヘビーな内容だが、重たく感じさせないような書き方になっている。
勿論、先ほどの視点や解釈もそれほど重々しく感じない。
ここで印象に残った分を紹介する。
「楽しそうに生きてれば、地球の重力なんてなくなる」
「その通り。わたしやあなたは、そのうち宙に浮かぶ」
この作品は、こんなあなたにオススメ。
- 遺伝子についての初歩的な知識を学びたい人
- 雑学王になりたい人
- 家族愛に感動したい人
- 価値観を変えにベトナム等外国に一人旅をしに行きたいけれど、出来るなら日本で価値観を変えたい人
- 登場人物にすら楽しさを感じてしまいたい人
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