伊坂幸太郎のSF作品「PK」のあらすじ・感想・解説

2016/11/08

伊坂幸太郎さんの22作目の小説であり、2012年3月に単行本、2014年文庫本が出版された作品「PK」

この作品「PK」は中編が3編連なる形で一冊の本になっている。

その3編は順に①2011年の5月号の「群像」に収録された「PK」、②同じく2011年の「群像」の7月号に収録された「超人」、そして③SFの「NOVA5」に収録された「密使」である。

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PKの特徴

分量は3編すべて合わせても、244Pしかない分量であり、サラッと読んでしまえる分量ではある。

そして中編にはお互いに関連性があり、続けて読むことによって長編小説としても楽しむことが出来る作品になっている。

ただ、その長編として読んだ物語は果たして本当に長編だったのだろうか、と思わせる何かがある。

また伊坂幸太郎さんはミステリーを主に書いてきている作家であるが、その良さにジャンルに当てはまらない世界を描き出すというところがあるように、本作でもSFが主体であるかのようでいて、また新鮮なものとなっている。

PKのあらすじ

3編それぞれに異なるストーリー軸を持っている為、分けてあらすじを書いていく。

PK

ワールドカップ予選の試合に漂う少し何かが違う緊張感。

ある作家は巨大な陰謀に巻き込まれる。そして脅される大臣。

背後に潜む巨大な何かの影。

1つ1つの物語が進むとき、勇気のドミノが連鎖しているのを垣間見ることになる。

超人

小説家三島の家に滞在していた田中は、特殊能力を持った警備会社の営業担当の本田青年と三島と共に出会うことになる。

本田青年の特殊能力とは?

本田青年に降りかかる苦難。一体どうなってしまうのか?

密使

他人の時間を奪うことが出来る男。

世界のために死ねと言われた男。

すべてがつながり、ここに完結する。

伊坂幸太郎が描くSFを楽しめる1作。

PKの解説(ここからネタバレ含む)

ここからはラフに書いていきます。

まずは中編ごとにみていきます。

PK

パート別

この中編は5つのパートに分かれていますが、

まずはパート別にみていくと、

A「2002年ワールドカップフランス大会の予選」

B「作家が原稿の修正の圧力と戦う」

C「大臣が何らかの圧力と戦う」

D「居酒屋での男女の他愛もない話」

E「大臣が新人議員のころ、子供を救った話」

ですが、Eの幼児を救った人はまず間違いなく将来の大臣でしょう。

あとで鳥肌が立ったのが最後の大臣と秘書のシーン。

サラッと読むと大臣の秘書が二郎君であるという事に驚き、そこで思考が停止してしまいそうになるんですが、本当にそうなのでしょうか。

もし仮に二郎君=秘書とした場合、作家のでっち上げで作られたとされる二郎君が存在していることになります。

ここで年代別にみていきましょう。

年代別

1954年 大臣生まれる

1984年(27年前) 大臣が30だった頃、幼児救出

2002年 ワールドカップフランス大会

2011年 Cの話が進んでいる西暦

さらにここで作家の二郎君話のBパートを読むと、携帯ゲームなどが登場します。

もし仮に作家が大臣の父ならBパートは1960年くらいにならないといけないのですが、そうではない。

したがって、このまま読み解くと、作家≠大臣の父となります。

ここまでをまとめると、

①秘書は二郎君ではない。

②作家は大臣の父ではない

となります。

つまり、パートでいうと、Bパートのみがこの世界と違う可能性すらあります。

 

勇気の伝染順

ここで簡単に勇気の伝染順についてまとめます。

ことの発端は、マンションのベランダかた落ちた赤ちゃん(本田毬夫)を、議員なり立ての初々しい大臣がキャッチしたことです。

大臣、毬夫キャッチ→小津・宇野が勇気をもらう→サッカー続ける→PKを勇気を出して決める→大臣に伝わった

という感じ。

 

超人

PKとは世界が違う

この超人の世界では2002年のワールドカップが正史通りの日韓ワールドカップになっています。

しかし、前中編のPKではフランスワールドカップとなっており、その点からもPKとの世界が違うことが伺えます。

PKでは大臣の父はゴキブリ出現の効果によって浮気がバレていない、超人では大臣の父はゴキブリは出現しなくて浮気がバレる。

三島=青い服の男 説は想像の域を出ていない

こればかりはデータがないので想像の域を出ていないように思います。少しの類似は偶然で片付けることができるためです。

それならばこのスーパーマンは一体何なのかという話ですが、その能力からしても未来人の世界分岐調整係などの方がまだしっくりくるように思います。

繰り返しになりますが、データがそろっていないので、この辺は想像する楽しさを提供してもらっている遊びのようなものだと思います。

密使

世界について

PKと超人では世界はずれていますが、

PKの世界はあの計算によって分岐点を調べている地下に本拠地のある人々が、その膨大な計算によってゴキブリを出現させ、耐性菌の蔓延を防ごうとしたシュミレーションの中の世界で、超人ではゴキブリが出ていないことから、ゴキブリではないもっとスマートなやり方で耐性菌の蔓延を防ごうとしている世界です。

ただ正確にいうと、この密使での説明によると、分岐させてしまうと結果が変わらなくなってしまうので同一の世界においてすこしずらすことによって、結果を変えようとしています。

したがって、ゴキブリがでるでないは世界の分岐にはかかわらないので、同一世界Aと言っても過言ではないです。しかし、密使でのストーリーを確定したものとすると、PKストーリーの流れは実際には起こっていないという事になります。つまり、PKはシュミレーション、超人・密使が実際に起こったことと考えられます。

参考資料

このPKを執筆するにあたっての伊坂幸太郎さんが参考になさった本がいくつかあります。

それをご紹介していきます。

まず「臆病は伝染する。そして勇気も伝染する」でおなじみアドラーの心理学についてかかれた本

対人関係などでお悩みの方、生きる勇気について学べます。

そしてこちらが「戦争はなぜおこるのか」です。

作家がサラエボ事件について話すPKのシーンにて使われます。

あと2冊紹介します。

 

 

PKの感想

マイノリティリポート

総じて、マイノリティリポート感が強かった印象です。

この、人が犯罪を犯す前にその犯罪を未然に防ぐため、未来で犯罪者となる人物をあらかじめ取り締まるというのは非常に面白いテーマであり、それをうまく絡めながらストーリーを新しく仕上がったという感じ。

こういう、古典的な内容であっても面白ければ取り入れていくべきであると思うし、こんなことを言い出すと、斬新なアイデアのほとんどはフィリップ・K・ディックに食いつぶされていることになるので、これはこれでいいと思います。

ちなみにこちらがそのマイノリティ・リポートが収録された短編集です。

トータル・リコールも映画化がらみで有名です。

世界線理論とは違う

この作品の密使を読んだときに連想されたのは「シュタインズ・ゲート」の世界線理論でした。

大枠はほとんど一緒なのですが、シュタインズ・ゲートではどんな小さい変化でドミノ倒し的に過去を変えようとしても世界線をAからA’に分岐させないように大きな事象は変えられないようになっています。

唯一の解決策は起こったことを変えずに結果だけを変えること。

もし仮にゴキブリを追加で出そうとすると、世界線収束範囲(アトラクタフィールド)という壁に当たり、世界は収束=耐性菌は蔓延する、となります。

しかし、あまり深く考えず、違うものであるという前提で、「PK」を楽しみましょう。

ちなみに最後の密使が楽しかったという方は確実に「シュタインズ・ゲート」は楽しめると思います。

ゲーム・アニメ・小説・漫画となんでもあるので、ぜひどれか見てみてください!

本当の感想

このPKという作品。非常に楽しむことが出来ました。

奥が深くて、何回も何回も読み直すという楽しみ方ができる、するめのような作品です。

噛めば噛むほど味が出る。

中編が3つという事ですが、それぞれの内容がつながっているはつながっているのですが、それぞれに与えられたテイストがすこし異なっているので、それぞれの中編に対してまた異なった楽しみ方をすることが出来たように思います。

作品のふり幅が初期の伊坂幸太郎さんよりもさらに広がっているのを感じることが出来る作品でした。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

もっと本当は印象に残ったことは多くあります(ボールの例えやその他解説など)が、ひとまずこれくらいで〆たいとおもいます。

ぜひもしまだなら楽しんでみてください。

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