浦島太郎……だったのかもしれない【唐突にきな臭くなる童話】

むかしむかしあるところに、浦島太郎という心優しい青年がいました。

浦島太郎は浜辺を歩いていると、子供たちが1匹のカメをいじめているところに遭遇します。

心優しい浦島太郎はそんなカメがかわいそうになり子供たちのもとに駆け付けました。

「カメがかわいそうじゃないか」浦島は言いました。

すると子供たちは「僕たちが捕まえたカメじゃないか! この亀は僕たちのものだ!」そういいカメを蹴り続けました。カメは潤んだ瞳でこちらを見つめてきます。

浦島太郎はお金を取り出し、子供たちに差し出し言いました。

「それじゃあ、このお金でそのカメを買わせてくれないか?」

「それなら……」と子供たちはカメを解放し、去っていきました。

浦島はカメに「大丈夫かい? もう捕まるんじゃないぞ」といいカメを抱きかかえ海へと解放しました。

 

思い返せばこれが悪夢の始まりだったのかもしれない。

 

二、三日後、浦島が釣りをしていると「……浦島さん。……浦島さん」とどこからか呼ぶ声が聞こえる。

浦島は声を頼りに水面の方を見ると、この前助けたカメがこちらを向いて話しかけてきていた。

「カメが……喋っただと……」浦島は背筋に冷たいものが流れるのを感じる。

「そういえば浦島さん。この前助けてもらって海に返してもらう際に、少しばかり薬を注射させてもらいました」とカメは言った。

「注射……とは一体……」浦島の時代はまだ医療も発達しておらず、注射という概念がなかった。

「注射というのは体内に針を刺し、そこを経由させて薬を送り込む事さ」浦島にはカメの右頬が僅かに上がったように感じられる。

「それで、だ。浦島さん。この薬品を投与させてもらったから浦島さんには僕たちの言語が理解できるようになっていると思う。だからさ、来てくれないかな? 僕たちの世界、竜宮城に」

浦島はそこで自身の体の自由が利かなくなっていることに気づく。

「ごめんね。浦島さん」

そのカメの言葉を最後に、浦島の意識は途絶えた。

 

軽い頭痛と共に浦島は目覚めた。浦島が寝かされていた布団は浦島が見たことのない物であった。床から伸びた4本の脚。それに支えられるように床を切り出したような板に布団が引かれていた。

それよりも浦島を驚かせたのは、水の中で息が出来る自分に対してであった。

浦島は海に隣接した町で生まれ育った。故に、水の中では息はできないというのは常識であった。その常識を打ち砕かれたのである。

やがてあの浦島を誘拐したカメが浦島のもとにやってきた。

「やぁ、体調はよさそうだね。息もできているみたいだし」

「ここはどこなんだ?」浦島には見たことのない世界が広がっていた。半透明の大きな筒が密集し、どこまでも広がっている。

「言っただろ? ここは竜宮城さ」カメは、やはりそれが笑っているという事かもしれないが、頬をすこし不自然に上げた。

「竜宮城……」それは浦島が思っていた城のイメージとは異なった。今いる部屋から見下ろすとツタが絡まっているような半透明の筒でできた街の姿が見える。

「これから浦島さんには対人間用の実験に付き合ってもらおうと思っているんだ」

「そんなこと……僕は君を助けたのに何で君はこんなことを!」浦島は叫んだことで自然と目から涙が溢れそうになる。

君に助けてもらったんじゃないよ。そう思うのもムリはないことなんだけど、あれは作戦だ。子供たちもグルだしね

浦島はこれからどうなるかわからない不安と裏切られたという思いで心が張り裂けそうであった。

 

浦島は、鉄がどうしたらこのような形状になるのか全く分からない、というような形をしたものがたくさん置かれている部屋へと案内された。時々一部が光るその金属群になんだかきれいだとこんな状況にも関わらず感じてしまう。

浦島は裏切られていたというショックから、言われることへ逆らう気力もないままに、寝かせられ頭へと何かを付けられるのを感じていた。

「君はこれからこの“玉手箱”によって生まれ変わってもらう。生まれ変わるといっても肉体的には一部しか変わらない。変わるのは人生さ」

 

 

 

むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが暮らしておりました。

おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に出かけました。

おばあさんが川で選択をしていると川上から大きな桃が、どんぶらこどんぶらこと流れてきました。

これはよい土産になると、おばあさんは持って帰ろうとしました。

しかし、川から陸へは何とか流れの影響で半ば打ち上げられる形で上陸をした桃だったのですが、そのサイズ故に持って帰ることはできません。仕方なく放置し、いったん帰宅することで、おじいさんと共に再度出直すことにしました。

おじいさんも帰宅し、二人で再び川へやってきたところ、いまだに川辺に大きすぎる桃がありました。

おじいさんと共にその場で桃を割ってしまう事にしました。すると中から青年が出てきました。

青年は自分が何者でどういう人生を送ってきていたのかを忘れてしまっていましたが、おじいさんとおばあさんが大切に育てました。

 

3年後青年は、腰を痛めてしまったおじいさんの代わりに山へ柴刈りに出かけました。もう歩きなれた道でしたがその日は前日に雨が降っており少しぬかるんでいました。

柴刈りが終わり、いざ帰ろうとした時、青年は足を滑らせ、斜面を転がり落ちてしまいました。何とか全身の痛みを我慢し立ち上がろうとしましたが、立ち上がった時、すこし立眩みを起こしました。頭を打ったのです。

その時、青年の頭の中に浜辺の光景が浮かびました。

「まさか……、まさか、そんな」青年はつぶやきました。

僕は、浦島太郎……という人間だったのか

浦島太郎は記憶を取り戻し、失われた人生を再び歩み始めました。

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